サリンジャーの時代
こんにちは、事務の竹内です。
前回、『アンネの日記』の保管者ミープヒース氏が亡くなられた事を書きましたが、
今度は作家のJ・D・サリンジャーの訃報が届きましたね。
偉人の死が続いてしまいました。
サリンジャーといえば一番有名なのは、やっぱり『ライ麦畑でつかまえて』。
私が最初に読んだのは村上春樹・訳の『THE CATCHER IN THE RYE』でしたが、
後に名訳と言われる野崎孝・訳の方も読破。(私はこっちのほうが好き)
ヒリヒリとした青少年ならではの語り口に、読後さらわれるような感覚を憶えます。
大学の卒業旅行でヨーロッパに行った時に飛行機の中で読んだせいか、
『ライ麦…』は「学生時代最後の読書」の思い出があります。
なかなか時期として良いチョイスだったと思いませんか?
16歳のホールデンに自分を重ねるような年齢ではないものの、
守られていた学生時代から、社会人として世間に送り出される間際、
思春期の青臭い葛藤を半ば実感し、半ば回顧(懐古)しながら読んだものです。
今、読んでもあの時のような気持ちにはなれないんだと思うと、
その時その時、できるだけたくさんの物事に触れておくことの大切さを想います。
そういえば、ジョン・レノンを殺害したマーク・デイビット・チャップマンも、
事件の時この本を持っていて、警察が来るまで読んでいたと言われますよね。
サリンジャーの描いた青年の衝動的な批判癖や潔癖さ、
それでも人との繋がりを必死に求める孤独への嫌悪と、
事件直前にアニー・リーボヴィッツによって撮影された
ピエタ像然としたジョンとヨーコの写真の暖かさとが
出来過ぎなまでにコントラストを成した歴史的事件という印象を持っています。
事実は小説より奇なりと言いますが、まさに映画の脚本のようなストーリーに用いられるのに
不謹慎ながらも名アイテムだと思ってしまいます。
それだけ存在感のある、偉大な作家だったと言うことなんでしょう。
昨年はマイケルジャクソンはじめ、偉大なアーティストや俳優が次々とこの世を立たれ、世間は騒然としたものですが…
サリンジャーは享年91老衰だそうで、なにやら時代の転換期なのかもしれないですね。
文化のバトンが受け渡される私達の世代から、これだけのスター性を持った人物がまた現れてくるのでしょうか?
時代がそれを妨げるような気がしてなりません。